共有物分割請求訴訟とは複数人で共有している不動産の分割を求めて裁判所に訴訟を起こす方法です。
共有物分割請求訴訟を提起するにあたり、時間と手間と弁護士費用などが掛かります。
弁護士に依頼することになった場合、どれぐらいの費用が必要になるのかご説明いたします。
1)持分の時価3分の1を経済的利益として民事訴訟の弁護士費用の計算
-経済的利益は持分の時価の3分の1
-報酬は?
1)旧報酬規程以外でもっともメジャーな弁護士費用の計算方法
2)旧タイプと新タイプの弁護士費用の比較
・持分の時価が1000万円の場合
・持分の時価が2000万円の場合
・持分の時価が4000万円の場合
3)共有物分割請求訴訟の弁護士費用の相場
1)協議や調停で解決すれば弁護士費用は3分の2程度に抑えられる
2)安い弁護士や無料相談を利用する
3)共有物分割請求以外での解決方法
-共有持分だけを買取り業者に買い取ってもらう
-共有持分を他の共有者に売却する
-共有持分を他の共有者に贈与する
-共有持分を相続放棄する
-経済的利益は持分の時価の3分の1
共有物分割請求訴訟の弁護士費用は持分の時価の3分の1を経済的利益として、民事訴訟の弁護士費用の計算方法を適用して計算します。
例えば時価6000万円の不動産の場合で考えてみましょう。
不動産を兄弟二人で2分の1ずつの持分で共有していたとして、兄弟の持分の時価はそれぞれ3000万円となります。
弟は自分の持分を兄に買い取ってもらいたいと「共有物分割請求訴訟」を弁護士に依頼しました。
民事訴訟の弁護士費用の計算では、経済的利益を基準に着手金と報酬金が計算されます。
経済的利益とはその訴訟で得られる利益のことです。依頼内容が解決した場合に依頼者が得られる経済的な利益です。
弟が希望通り3000万円で兄に持分を売却できれば、弟の得られる経済的利益は3000万円となります。
しかし弁護士費用が自由化される前の「弁護士会の報酬規程」により共有物分割請求訴訟の場合「持分の時価の3分の1を経済的利益とする」という法律事務所が多くあります。
ですからこの事例の弟の場合も、持分の時価の3分の1を経済的利益として弁護士費用を計算するのです。
つまり持分の時価は3000万円ですが、経済的利益は1000万円として弁護士費用を計算することになります。
-報酬は?
報酬は依頼する弁護士事務所によって異なります。
以下は報酬の一例です。
・経済的利益が300万円以下の場合、着手金9%、成功報酬15%
・経済的利益が300万円を超え3,000万円以下の場合、着手金5%+9万円、成功報酬10%+18 万円
・経済利益が3,000万円を超え3億円以下の場合、着手金3%+69万円、成功報酬6%+138万円
・経済報酬が3億円を超える場合、着手金2%+369万円、成功報酬4%+738万円
報酬の一例に当てはめて具体的な例で計算してみます。
共有持分の時価が900万円の場合には、着手金と報酬金は時価の1/3の300万円を経済的利益として以下のように計算します。
着手金:300万円×9%=27万円
報酬金:300万円×15%=45万円
棄却されずに判決が下れば、27万円と45万円を合算した72万円を弁護士に支払います。交通費などの実費がかかった場合はそれらも上乗せされます。
経済的利益の額を持分の時価の3分の1として弁護士費用を計算する方法が一般的ですが、弁護士費用は自由化され、新タイプの方法で弁護士費用が計算されています。
旧報酬規程以外でもっともメジャーな計算方法を説明いたします。
着手金と報酬金を共有持分の時価に基づいて計算する方法です。
旧報酬規程以外でもっともメジャーな計算方法は着手金30万円、報酬金は取得した金額の5%とする計算方法です。
経済的利益に基づく計算方法の場合、時価を1/3にして各弁護士事務所で定められている着手金と報酬の計算式に当てはめる必要があるので面倒でした。
しかし共有持分の時価に基づいて計算するという方法は、計算が簡単と言えます。
報酬金を時価に基づいて計算する方法を採用している弁護士事務所は、着手金を30万円に設定しているケースが多いです。
共有持分の時価が900万円で報酬金を5%に設定している場合には「900万円×5%=45万円」が報酬金となり、着手金と30万円との合計は75万円となります。
経済的利益に基づいて計算する場合と同様、最後にかかった実費が上乗せされます。
旧タイプと新タイプの弁護士費用を時価3000万円の持ち分を3000万円で売却できた場合で比較してみましょう。
・旧タイプの計算方法
3000万円の3分の1を経済的利益として計算する従来型の計算方法では、着手金59万円、報酬金118万円の合計177万円となります。
・新タイプの計算方法
着手金30万円、報酬金は取得した金額の5%の計算方法では、着手金は30万円、報酬金は3000万円の5%で150万円の合計180万円となります。
持分の時価が3000万円の場合は、比較してみるとどちらの計算方法でもほぼ一緒の弁護士費用となりました。
そこで持分の時価が1000万円、2000万円、4000万円の場合でも比較してみました。
・持分の時価が1000万円の場合
旧タイプ 着手金:26万円、報酬金:51万円、合計77万円
新タイプ 着手金:30万円、報酬金:50万円、合計80万円
・持分の時価が2000万円の場合
旧タイプ 着手金:42万円、報酬金:85万円、合計127万円
新タイプ 着手金:30万円、報酬金:100万円、合計130万円
・持分の時価が4000万円の場合
旧タイプ 着手金:76万円、報酬金:151万円、合計227万円
新タイプ 着手金:30万円、報酬金:200万円、合計230万円
見ての通り持分の時価が1000万円から4000万円では、旧タイプも新タイプもほとんど弁護士費用は変わりありません。
これまでの結果から共有物分割請求訴訟の弁護士費用の相場は、旧報酬規程をベースにした経済的利益を持分の時価の3分の1にする方法と、着手金30万円、報酬金は取得した金額の5%のふたつといえると思います。
計算方法が簡単なのは着手金30万円、報酬金は取得した金額の5%の方ですので、これを基準に見積もりの弁護士費用が高いか安いかを判断するとよいでしょう。
弁護士に依頼して協議や調停までで話し合いがまとまれば、弁護士費用を2/3程度に抑えることができます。
例えば、訴訟に発展した場合の弁護士費用が50万円だとしたら、協議や調停の段階で解決できたときの弁護士費用は約35万円となります。
協議や調停は弁護士に依頼しなくても自分自身で行えますし、手続きが少ないため弁護士費用も安くなります。
共有物の分割に反対している共有者がいる場合は、弁護士が間に入ると協議がスムーズに進みます。
調停でも法的根拠に基づいた主張ができた方が有利になりますので、交渉や調停であっても自分でおこなうより弁護士へ依頼したほうがよいでしょう。
ただし調停の段階でも訴訟と同じ費用がかかる弁護士事務所もあるので、費用はしっかりと確認しておきましょう
着手金は弁護士事務所がそれぞれ設定できますので、着手金が安い弁護士事務所に依頼をすれば弁護士費用を抑えられます。
初回の相談は無料でおこなっている弁護士事務所も多くあるので、そのような弁護士事務所を利用するのもよいでしょう。
報酬金の割合を低く設定している弁護士事務所を選ぶのもよいでしょう。
着手金などの金額は、弁護士事務所のホームページで確認できます。
共有物分割請求訴訟以外に、他に現金化するまたは共有状態を解消する方法はあるのでしょうか?
共有物分割請求訴訟以外の解決方法として、以下の4つを考えられます。
-解消方法① 共有持分だけを買取り業者に買い取ってもらう
共有持分だけを取得しても購入者はできることが制限されるので、一般の人が共有持分を買い取ってくれることは基本的に期待できません。
しかし、共有持分専門の買取り業者がおり、その業者に買い取ってもらうことができればすぐ共有持分を現金化できます。
-解消方法② 共有持分を他の共有者に売却する
共有者の1人が不動産を占有しているケースでは、リフォームやリノベーションといった改良をおこなう際にいちいち他の共有者の同意を得なくてはならないことに煩わしさを感じているという人もいます。
そのような共有者の場合、自身の持分割合を増やすことを希望している可能性があるため買い取ってくれることも多いです。
-解消方法③ 共有持分を他の共有者に贈与する
他の共有者に贈与すれば自身の共有持分を失うことになるため、共有状態を解消できます。
そのため、共有状態を今すぐ解消したいと考えている人におすすめです。
しかし贈与により相手に贈与税が課される可能性があるため、黙って贈与するのではなく事前に相手に伝えておく必要があります。
また、共有持分は持っていてもできることが限られている価値の低い資産ですが、贈与だと1円も手に入りません。
-解消方法④ 共有持分を相続放棄する
共有持分を相続放棄した場合は、自身が相続するはずの共有持分は他の共有者に移るので共有状態を解消できます。
しかし共有持分のみを相続放棄することはできず、全ての財産を放棄することになるので注意してください。
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