不動産を手放したくないがローンが払えないという時のために買戻特約を付けて売却する方法があります。
この買戻特約は不動産の共有持分の売買の場合でも可能なのでしょうか?
それが可能であれば共有持分の管理、処分の方法の選択肢が増えることになります。
今回は買戻特約と共有持分の関係について説明します。1)買戻特約とは
2)買戻特約はどのような時に利用するのか?
2.共有持分を売買したとき買戻特約を付けることはできるのか?
1)共有持分は買戻特約付きで売買できる
2)買戻特約を付けて共有持分を売買するメリットとデメリット
-買戻特約を付けて共有持分を売買するメリットについて
メリット①売却代金を受け取ることができます。
メリット②不動産を手放さずに済む
-買戻特約を付けて共有持分を売買するデメリット
デメリット①買主が見つからないケースに注意
デメリット②物価が変動したら買主は損をする可能性が高い
1)必要な手続きについて
2)買戻特約の期間は10年まで
3)名義変更の際に買戻特約を登記する不動産を手放したくないけれどもローンが払えないという人のために買戻特約を付けて売却する方法があります。
買戻特約は将来、買い戻すことを前提に不動産を売却するときに付ける特約です。
すなわち売主が将来的に対象不動産を買い戻す(売買契約を解除する)ことを条件にした不動産売買の方法です。
不動産を担保にした一時的な借金といえます。
【民法第597条】
不動産の売主は、売買契約と同時にした買い戻しの特約により、買主が支払った代金(中略)及び契約の費用を返還して、売買の解除をすることができる。この場合において、当事者が別段の意思を表示しなかったときは、不動産の果実と代金の利息とは相殺したものとみなす。
民法で定められているように、売主は売却時の代金と契約にかかった費用を支払うことによって、特約で定めた期間内であれば不動産を買い戻せます。
諸事情により不動産の所有が難しくなった人でもこの特約を付ければ不動産を手放すことなくお金を取得できます。
どうしても思い出の詰まった家を所有し続けたい気持ちと、お金を確保し続けるのが難しいという現実のギャップを埋めることができます。
実際のところ買戻特約は個人間の売買取引で利用されることは少ないのが実情です。
よく利用される場面としては、転売目的で購入する人を排除するために不動産業者が新築マンションなどに付加します。
買戻特約を付加することで、もしも転売されてしまったとしても買い戻すことができ、事実上の転売禁止にできるからです。
また、担保目的とする場合に利用されます。
行政や不動産業者によっては不動産を売却する際に、投資や投機目的での購入防止として定住してもらうために買戻特約した経緯もあるようです。
どういう事かというと買戻特約は一定期間でその効力を失いますが、買い戻し期間内に転居したらその不動産を没収するという使い方をして転売を禁止したという事です。
のちほど詳しく説明しますが、買い戻すことを目的に付加する場合、買い手が見つかりづらく買い戻し金額で損をする可能性が高いというデメリットがあります。
将来買い戻すことを前提として売買をするときに利用できるわけですが、個人間売買で利用されることはほとんどないと思います。
とはいえ不動産を手放したくないという気持ちは譲れないと思います。
今回のテーマの核心の部分になりますが、共有持分でも買戻特約付売買は可能です。
共有持分の売買においても、売主と買主が合意していれば買戻特約は付けられます。
登記しておけば他の共有者など、売買の当事者以外にも買戻特約を主張可能です。
反対に、登記していなければ買い戻す約束だったと主張できません。
このように共有持分は買戻特約付きで売買することは可能ではありますが、実際に共有持分の売買で買戻特約を付けられることはあまり多くありません。
-買戻特約を付けて共有持分を売買するメリットについて
① 売却代金を受け取ることができる
買い戻すことを前提にしているとはいえ、不動産を売るのですから売却代金を受け取ることができます。
売主の立場の場合は現金を手にでき、住宅ローンが払えないという悩みを解消できます。
ただし将来買い戻すことを前提にしているのであれば、結局は返すお金になります。
できるだけ使わずにしっかりと払える段階になるまで取っておいたほうが賢明かもしれません。
また買主の立場の場合は、収益物件の共有持分を買戻特約付きで購入すれば、将来的に現金に戻しやすくなるというメリットがあります。
不動産投資の場合、収益物件を購入するときは対象の物件が将来的に売れるのか、いくらぐらいで売れるのかが重要なポイントと言えます。
買戻特約付きなら購入したときの費用がいずれ返ってくるので初期投資を回収することができますし、買い戻されるまでに家賃収入があればトータルで利益を得られます。
ただし、共有持分の家賃収入は不動産全体の家賃収入を持分の割合で計算して分配されるため単独名義より得られる利益は少ない点には注意が必要となります。
しかし、共有持分の取得にかかった費用がほぼ確実に返ってくることを考えるとリスクの少ない不動産投資といえます。
② 不動産を手放さずに済む
買戻特約は文字どおり一度売った不動産を買い戻せる点です。
これが買戻特約の最大のメリットと言えます。
通常の売却の場合、一度売ってしまうと再び所有することは極めて難しいと言えます。
買戻特約をつけたとしても一時的には手放すことになりますが、期間満了までは買い戻す権利があり、完全に自分の手から離れてしまうわけではありません。
実質的には不動産の処分を避けつつ、まとまった資金を取得できます。
売却代金を元手に資産を増やし資金に余裕ができてから買い戻すという運用が可能となります。
-買戻特約を付けて共有持分を売買するデメリット
① 買主が見つからないケースに注意
買戻特約をつけての不動産売買は買主が限定されてしまい、買主が見つかりづらいデメリットがあります。
期間限定で不動産を所有したい人はごく稀と言えます。
不動産を購入するときは完全に自分の所有物にするのが基本的な考え方といえます。
ですから将来的に買い戻されてしまう物件をあえて購入する人は少数派と言えます。
一定の期間だけ不動産を使いたいのであれば賃貸物件を探す人がほとんどではないでしょうか。
また、不動産を所有したいのであればわざわざ買戻特約のついた物件は選ぶことはほとんどありません。
なので、需要が少ないと当然売りにくくなり、売却価格も下がってしまう恐れがあります。
買い手を探すのは非常に難しいと思っておいたほうが良いでしょう。
②物価が変動したら買主は損をする可能性が高い
買戻特約で定めた期間中に、物価が変動することも考えられます。
そうなった場合、買主は損をする可能性が高くなります。
なぜなら、売主が不動産を買い戻す金額は売買したときの金額と同額でなければならないと決められているからです。
物価が上昇したとしても、また下落したとしても買主にはリスクが発生します。
そのリスクは以下のようなことです。
物価が上昇した場合は実際の不動産価値より安く売らなければなりません。
不動産の資産価値が上昇しても、買い戻し価格は売買取引時の代金のままです。
500万円で購入した共有持分が1,000万円まで値上がりしても、500万円で買い戻されてしまいます。
物価が下落した場合は売主が買い戻さない可能性が高くなります。
買戻特約は売主が買い戻しをおこなう権利を設定するものなので、買主側から買い戻しを強制できません。
このようなリスクを負ってまで買戻特約をつけて購入してくれる人はあまりいません。
買戻特約は後から付けることができないため、売買契約と同時に手続きをおこないます。
買戻特約を付ける手続きの流れは以下のようなものです。
①買主と特約の期間などについて取り決める
②買戻特約をつけた内容で売買契約を結ぶ
③売却代金を受領し、不動産を引き渡す
④買戻特約をつけた内容で登記手続きをおこなう
不動産売買には様々なリスクが潜んでいるため、専門的な知識がある不動産業者などに間に入ってもらって手続きをおこなうのが一般的です。
もちろん売買取引してくれる買主を不動産会社に依頼して、見つけてもらうこともできます。
買戻特約をつけたとしても手続きの流れは通常の一戸建てやマンション売却の流れと同じです。
買戻特約の期間は、10年までと決められています。
期間の定めがないと買主はいつまで経ってもこの特約に縛られてしまうからです。
民法に定められている内容は以下のようなことです。
①特約期間を10年以上にすることはできない
②後から期間を延ばすことはできない
③期間について決めなかった場合、特約期間は5年になる
買戻特約で設定できる期間は法律で10年以内までとされています。
また最初に期間を定めなかった場合、5年以内に買い戻されなければ特約は無効となります。
期限が過ぎてしまえば特約の延長もできないので注意が必要です。
ただし、これらはあくまで特約の有効期限です。
特約が無効になっても当事者間の合意による買い戻しを妨げるわけではありません。
買戻特約で定めた期間が満了した場合、時効となり効力を失います。
効力を失ってしまった場合、当然ながら売主に不動産を買い戻す権利はなくなり、買主は自由に売買できるようになります。
ただし、期限切れになったからといって勝手に登記内容が変更されるわけではありません。
所有者と買戻権者が2人で共同申請し、買戻特約の抹消手続きをする必要がありますので注意しましょう。
買戻特約を付けて共有持分を売買する場合、名義変更の登記をするとき、買戻特約についても申請しなければいけません。
買戻特約が登記されることで第三者にも特約の存在を主張できるようになります。
例えば買主が共有持分を転売した場合でも、買戻特約が登記されていれば買戻せます。
登記されることによって買戻特約が第三取得者(転売された共有持分の購入者)にも引き継がれるのです。
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