共有不動産(土地)を分割する場合、持分に応じて分割を行えば問題ないと思いがちですが、単に面積だけで計算し安易な分割をすると思ってもみない税金が課せられることもあります。
共有不動産(土地)を分割する際に生ずる課税関係についてご説明いたします。
1)現物分割
2)換価分割
3)代償分割
1)「所得税基本通達33-1の6」について
2)共有持分に応ずる分割の贈与税、所得税について
-分筆後の土地の時価と面積が持分割合と一致する場合
3)共有持分に応じてない分割の贈与税、所得税について
-土地の時価と面積の両方が共に持分割合と一致しない場合
-土地の時価比率と持分割合が一致しない場合(面積比率と持分割合は一致する)
-土地の面積比率と持分割合が一致しない場合(時価比率と持分割合は一致する)
-不動産取得税とは
-共有持分に応ずる分割の場合の不動産取得税
共有物分割とは共有している不動産等の共有状態を解消し、単独所有にすることをいいます。
共有物を分割する場合は原則として譲渡所得の課税が生じますが、一定の条件の場合には譲渡はなかったものとして取り扱われます。
内容によっては贈与税の課税なども生じる場合もありますので十分に注意する必要があります。
まずは共有物分割の方法について簡単に説明します。
現物分割とは共有している土地を分割(分筆)することです。
土地を分筆して、各人が分筆後の土地をそれぞれ単独所有とする方法です。
分筆とは土地を法的に分割すること、1つの土地を複数に分ける事を言います。
すなわち分筆とは土地を切り分ける手続きで、「筆」とは土地の数え方で一筆の土地を複数に分割するのが分筆です。
換価分割とは共有の不動産を売却し、その売却代金を持分に従って分割する方法です。
換価分割は全部売却ともいい、共有者全員の承諾をもらったうえで共有不動産を売却し、その代金を共有持分割合に基づき配分する一番シンプルな方法です。
共有者は売却につき譲渡所得の課税が生じます。
代償分割とは共有物を1人の共有者の単独所有にする代わり、他の共有者には共有持ち分相当の金銭を支払って分割する方法です。
代償分割を持分移転ともいい、共有者が他の共有者に対して自己の持分権を譲渡し、その代償として金銭等を受取る方法です。
共有持分を売却した共有者は譲渡所得の課税が生じます。
また、共有持分相当額が時価に対して高い場合や低い場合には共有者間で贈与税の課税が生じる可能性があります。
「所得税基本通達33-1の6」では、共有物分割について次の通り規定しています。
【所得税基本通達33-1の6(共有物の分割)】
個人が他の者と土地を共有している場合において、その共有に係る一の土地についてその持分に応ずる現物分割があったときには、その分割による土地の譲渡はなかったものとして取り扱う。
共有物分割(現物分割)による課税については、この「所得税基本通達33-1の6(共有物の分割)」の内容が基本となります。
-分筆後の土地の時価と面積が持分割合と一致する場合
所得税法上、土地や建物の交換は資産の譲渡となり、一般的には所得税が発生します。
ですが、共有物の分割(現物分割)が持分に応じておこなわれ、分筆後の土地の時価と面積が持分割合と一致する場合は譲渡所得税も贈与税もかかりません。
これは上記で説明した所得税法基本通達33-1の6(共有地の分割)の考え方に基づいています。
持分に応ずるとは、分割後のそれぞれの土地の価格の比率が共有持分の割合の比率におおむね等しいことであると考えられます。
そのため持分に応ずる分割(現物分割)はその資産全体に及んでいた共有持分権がその一部に集約されたのに過ぎないので資産の譲渡(交換)による現実の収入があったといえるだけの経済的実態がないと考えられ、現物分割による譲渡はなかったものとして取り扱われます。
そのため贈与税、譲渡所得税などの課税は生じません。
-土地の時価と面積の両方が共に持分割合と一致しない場合
分筆後の土地の時価と面積が共に持分割合と一致しない場合は、譲渡所得税も贈与税もかかってきますので注意してください。
土地の分割は、単純に面積比率が持分比率と一致しているかではなく、その分割後のそれぞれの土地の時価比率が持分比率と一致しているかどうかで課税が生じるポイントとなります。
この場合のように土地の時価比率が持分比率におおむね一致していない場合には、譲渡所得税や贈与などの問題が発生してきます。
-土地の時価比率と持分割合が一致しない場合(面積比率と持分割合は一致する)
この場合は、分筆後の土地の面積は持分割合と合致しているのですが、時価が持分割合と異なります。
面積と持分割合が同じなので課税が生じないと思われがちですが、面積は同じでも土地の形状等により評価は変わるため、時価比率が持分比率とは一致しません。
例えばAさんとBさんは面積での分割状況がAさん1、Bさん1であったとしても分割後の価値がAさん3、Bさん1(3,000万円、1,000万円)だった場合、Aさんは均等に分割した価値よりも多くの恩恵を受けています。
土地は道路に面しているか否かでその価値は大きく異なったりしますので面積は一緒であっても、土地の価値が一致しないために税金がかかってきます。
このように、共有不動産を単に面積だけで分割してしまうとかえって余計な税金が課されてしまうことになるので注意が必要です。
-土地の面積比率と持分割合が一致しない場合(時価比率と持分割合は一致)
分筆後の土地の面積比率と持分割合が一致しない場合でも土地の時価比率と持分割合が一致するような場合は面積が持分割合と違っているので税金がかかると思いがちですが、この場合は譲渡所得税も贈与税もかかりません。
時価比率が持分比率になるように分割すると、時価は同じでも面積比率は持分比率とは一致しません。
それは不動産が面している道路により時価が異なってくることや分割の方法によって片方が不整形になることもあり土地の面積は同じでも土地の時価価値が変わってくるからです。
持分割合が面積比率とは異なったとしても時価比率が一致すれば持分に応ずる権利が集約されたに過ぎず、資産の譲渡による収入(値上がり益)があったとはみなされないので課税上の問題は生じてきません。
-不動産取得税とは
不動産取得税とは土地や家屋の購入、贈与、家屋の建築などで不動産を取得したときに、取得した方に対して課税される税金です。
-共有持分に応ずる分割の場合の不動産取得税
共有持分に応ずる分割の場合の不動産取得税は、原則として非課税となります。
共有不動産の分割については、共有持分の交換による取得があったという考え方もできますが税法においては、共有物の分割が共有者の持分割合の範囲内であれば、その分割による不動産の取得についてはあくまで形式的な所有権の移転にすぎないものとみなされ、不動産取得税は非課税としています。
ただし分割前の持ち分を上回る部分の取得があった場合には課税対象となりますので注意しましょう。
このように共有物の分割が持分に応じていれば税務上の問題はありませんが持分に応じていない場合には、譲渡所得税及び贈与税の問題が生じます。
共有物分割を行う際には、税金面で優遇が受けられる部分が大きいですが単に面積だけで分割してしまうとかえって余計な税金が課さられたりします。
安易な分割をすると、思っても見ない税金が課されてしまうかもしれません。
土地を分割するときは、分割後のそれぞれの土地の時価の比率に特に注意をすることです。
共有物分割にはいろいろなパターンが考えられます。
なので共有物の分割については、上記以外にも税務上の取り扱いが考えられますので慎重な対応が必要です。
共有不動産の分割をお考えの方は適切なアドバイスを受ける事が一番の対処法ですので是非一度、専門家へのご相談をおすすめします。
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