夫婦で家を購入するときにペアローンを組み、夫婦の共有名義にするケースがよくあります。
一般的に共有持分の不動産を分けるとき、持分割合に従って財産を分ける事になりますので不動産を共有名義にする時にはそれぞれの出資割合に準じて「持分割合」を決めなければなりません。
しかし離婚の際には持分割合とは無関係に共有名義になっている家、もしくはマンションを分けることになります。これは家が「財産分与」の対象になるからです。
夫婦が離婚することになった場合の共有不動産の財産分与についてご説明します。
財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して築いた財産を離婚時に夫婦それぞれに分けることを言います。
一般的に夫婦の財産形成に対する貢献度は同程度であると考えられており、財産分与をするときには夫婦が2分の1ずつにするのが原則です。
家を分ける時も同様で、夫婦の共有持分割合がどうであれ分けるときには2分の1ずつになります。
財産分与は夫婦で協力して決める方法があります。
預貯金や不動産などのプラスの財産と、住宅ローンなどの負債といったすべての共有財産をリストアップし目録を作成します。
法的な書式はありませんが離婚協議書などを作成し、書面で残しておくことをおすすめします。
通常は半分ずつで分割することが一般的ですが、夫婦間の話し合いで合意すれば自由に分割方法を決められます。
夫婦の協議で決まらなければ、家庭裁判所に財産分与請求の調停を申し立てることができます。
離婚する前ならば離婚調停の協議の中で財産分与の話し合いもできます。
調停では調停委員を通じて財産の取得や維持に対する夫婦お互いの貢献度などについて話し合います。
調停でもまとまらない場合は、調停は不成立として終了し自動的に審判手続き
が開始されます。こうなると裁判所が必要な審理を行った上審判によって決まります。
一般的に財産分与は離婚前に決めますが、離婚後にも財産分与を請求することもできます。
また、財産分与の時効は離婚から2年です。
財産分与の時効は除斥期間と言われており決められた期間が過ぎると請求できなくなりますので注意が必要です。
財産分与の対象となる共有財産は、①建物や土地などの不動産②車③家財道具④電化製品⑤保険⑥株券などで、結婚後に2人で協力して築いた資産になります。
また、夫が妻に内緒で購入していた土地や不動産なども結婚後に購入した場合は、二人の共有財産として認識されるため財産分与の対象となります。
夫婦の片方の名義になっている預貯金や車、有価証券、保険解約返戻金、退職金等、婚姻中に夫婦が協力して取得した財産といえるものであれば財産分与の対象となりえます。
共有財産か否かの判断は財産の名義によるのではなく、実質的な判断によります。
婚姻中に夫婦の協力により形成・維持されてきた財産であれば名義を問わず、財産分与の対象である共有財産との判断がなされることになります。
①特有財産
特有財産とは、「婚姻前から片方が有していた財産」と「婚姻中であっても夫婦の協力とは無関係に取得した財産」のことをいいます
「婚姻前から片方が有していた財産」とは、独身時代に貯めた預金やお嫁入り道具として持ってきたものなどが考えられます。
「婚姻中であっても夫婦の協力とは無関係に取得した財産」とは、婚姻中に発生した相続によって一方の親の遺産や贈与などによって得た資産などが考えられます。
ただし特有財産にあたる財産でも、婚姻後に夫婦が協力したことによって価値が維持されたといえる場合や、価値が増加したのは夫婦の貢献があったからだといえるような場合には、貢献度の割合に応じて財産分与の対象とされる場合もあります。
②別居後に築いた財産
財産分与の対象となる財産は原則として「別居時」を基準に確定されます。
そのため、離婚前であっても別居後に取得された財産については財産分与の対象にはならないと考えられています。これはたとえ婚姻関係が継続していたとしても、別居後については夫婦が協力して得た財産とはいえないという考え方にもとづいています。
③債務
借金などの債務については、夫婦の共同生活を営むために生じた借金であれば夫婦共同の債務として財産分与において考慮されるべきことになります。
しかし、自分のために借り入れた個人的な借金は財産分与において考慮されないと考えられています。そのためパチンコのために借入をした借金は、財産分与においては考慮する必要はないとの結論になります。
④年金
年金は財産分与の対象にはなりませんが、離婚時年金分割の請求ができる場合があります。離婚をするとき相手が厚生年金や共済年金に加入している場合には確認してみましょう。
財産分与はその性質や目的によって大きく3つの種類に分けられます。
財産分与のうちでもっとも中核となるのが清算的財産分与です。
夫婦が婚姻中に築き上げた財産を、それぞれの貢献度に応じて公平に清算するというものです。
清算的財産分与は離婚原因があるか否かによっては左右されず、あくまで2人の財産を2人で分けましょうという考え方に基づくものです。そのため清算的財産分与は、どちらに離婚の原因や責任があるかということにかかわらず夫婦のそれぞれの貢献度に応じて財産を公平に分けることになります。
扶養的財産分与とは、離婚をした場合に夫婦の片方が生活に困窮してしまうという事情がある場合に、その生計を補助するという扶養的な目的により財産が分与されることをいいます。
離婚時に夫婦の片方が病気であったり、経済力に乏しい専業主婦(主夫)であったり、高齢・病気であったりする場合に認められることがあり、経済的に強い立場の配偶者が他方の経済的弱い立場の配偶者に対して、離婚後もその者を扶養するため一定額を定期的に支払うという方法が一般的にとられています。
慰謝料は財産分与とは性質が異なるものですから、両者は本来別々に算定して請求するのが原則です。
しかし両方ともに金銭が問題になるものですから、慰謝料と財産分与を明確に区別せずにまとめて「財産分与」として請求する、もしくは支払をすることがあります。この場合の財産分与は「慰謝料も含む」という意図があるので慰謝料的財産分与と呼ばれているのです。
不動産を共有するのに夫婦や家族である必要はないので離婚後も共有名義のまま不動産を維持することはできますが、将来トラブルになるリスクが高いのでこのようは方法を取らないのが一般的です。
離婚時に共有名義の家をそのままにしておく事は財産分与のときに時間や出費がかからないというある程度のメリットはありますがデメリットのほうが大きいと考えられます。
共有名義のままにしておく注意点はどのようなことでしょう?
①夫婦の両者の同意がないと売却や活用ができません。
離婚後も不動産が共有状態になっていると将来、家を売却したい、家を貸したいと思っても、また家の増改築や不動産を担保にお金を借りたい場合なども相手の同意が必ず必要となるため、お互いの意見が合わない場合スムーズに進めないというリスクが発生することになるでしょう。
離婚した後も相手との関係が続いてしまうので、嫌だと考えている方が多いようです。
②相続のとき関係がとさらに複雑になります。
家が共有名義のまま離婚後、夫婦どちらかが亡くなってしまった場合、家の共有持分は亡くなった側の遺族に相続されます。
たとえば亡くなった夫が再婚しており、新しい配偶者と子供が1人いた場合、元夫が持っていた共有持分をこの2人が相続します。そのため今後は相続した2人の同意がなければ家の売却や活用ができないというさらに複雑な関係になってしまうのです。
③共有分割調停や共有持分訴訟になる可能性もある
夫婦共有者間での協議で合意できなければ調停や訴訟を起こせます。
共有分割調停とは相手と協議をしても解決できない場合、裁判所で共有物分割調停を申し立て裁判所の調停委員が間に入って調整してもらう方法です。
相手と連絡を取ったり直接顔を合わせたりする必要もありませんし、調停委員から客観的な和解案を提案してくれるので合意できる可能性が高くなります。
共有分割調停で合意ができない場合、裁判所で共有物分割訴訟という訴訟うを起こし裁判によって解決するしかありません。共有物分割訴訟とは、裁判所に適切な分割方法を裁定してもらい共有状態の解消を行う訴訟です。
夫婦どちらかが相手に自分の共有持分を全部譲り、家を単独名義にしてしまう方法です。
そのためにはどちらかの共有持分を相手に「財産分与」することによって対応します。
ただし、住宅ローンが残っているかどうかで注意が必要です。
①住宅ローンがない場合
住宅ローンがない場合には、共有持分を財産分与するのはとても簡単で、離婚成立後に、法務局に行き登記申請すれば名義変更することができます。
財産分与にもとづいて共有名義から夫婦どちらかの単独名義へ不動産登記(所有権移転登記の申請)をすれば変更できます。
この場合は単独名義となった側が家の価値の半額分を相手に代償金として支払うことで公平に財産分与することができます。
金がかかってくるので注意が必要です。
単独名義にすると所有権移転登記をした際に登録免許税を支払わなければいけませんので注意が必要です。
②住宅ローンが残っている場合
住宅ローンが残っている場合は共有名義から単独名義の変更は難しい場合があります。
住宅ローンを利用している場合、借入先の金融機関の了承を取らないでどちらか一方の単独名義に変更してしまうと住宅ローンの契約違反になるおそれがあるからです。
ですので共有名義を単独名義に変更することについて、借入先の金融機関から了承を得る必要があります。
違反すると、残っている住宅ローンの一括払いを求められる可能性もあります。
住宅ローンを完済するためにはどこかからお金を調達しなければなりません。
親族などにお金を出してもらうか、ローン借り換えをして相手名義のローンを完済し、住宅ローン全額を自分名義にする方法が可能な場合は現時点で住宅ローンが残っていても名義を変更することができます。
また、連帯保証人や連帯債務の関係となっている場合は、代わりとなる別の誰か、もしくは物的担保を入れることにより外してもらう方法があります。
これらの方法が無理であれば、ローンを完済するまでは共有名義のままで我慢するしかありません。
夫婦共有名義の家を離婚時に、家を共有状態のままにしておくとトラブルの種になりますし、単独名義にすることも話し合いがまとまらないなど問題が発生しがちです。
このような問題をすっきり解消するには夫婦共有名義の家を売却する方法が考えられます。
①アンダーローンの場合は売却代金を財産分与する。
アンダーローンとは、持ち家の時価が住宅ローン残高を上回っている場合をいいます。
アンダーローン場合、家を売却することにお互いが同意し家が売れたらその売却金額を使って住宅ローンを完済し、残ったお金を財産分与として夫婦で分け合うことができます。
このように売却することで住宅ローンを完済できれば、離婚後に面倒な家の問題を持ち越さずに済みます。
また、任意売却という方法もありますが期間が限られる上、一般の売買よりも低い価格で取引されることが多いため、売却を考えるならば住宅ローンの支払が滞ってしまう前に行うことが得策です。
②オーバーローンの場合はローンを大幅に減らせる
オーバーローンとは、家を売却する価格より残っている住宅ローンの残高が上回っている状態のことです。
この場合、財産分与の対象ではなくなりますが、売却してしまうことで共有名義となっている関係からは解消されます。
またローンの残債を少しでも減らしておくことでお互いが将来のリスクを減らしておくことができます。
住宅ローンが単独名義の場合はローンの名義人が住宅ローンの残債を支払っていくことになります。また、自分が連帯保証人や連帯債務者になっていた場合でも、売却した代金を住宅ローンの返済に充て住宅ローンの残債を少しでも減らしておくことで将来、ローン名義人が返済できなくなって自分にのしかかってくるローンの残債を少しでも減らしておくことができます。
家を売るかどうか決まっていなくても、いくらぐらいで売れるのかというのは「財産分与」の観点からも必ず知っておく必要があります。
売るかどうか決まっていないのに不動産会社に依頼して査定してもらうということにハードルを高く感じる人は少なくありません。
離婚が理由で、自分の家がいくらなのか知りたいという人はまず専門知識のある業者にご相談ください。
おすすめ不動産会社ランキング
株式会社中央プロパティー
95/100点
社長が専門家としてTVや雑誌で多数紹介。独自の入札方式で高値売却を実現。不動産鑑定士による調査報告書有り。
株式会社大正ハウジング
55/100点
1995年設立の社歴のある買取専門会社。センチュリー21の加盟店。東京都内の交通広告でおなじみ。
一般社団法人 不動産あんしん相談室
50/100点
代表者が女性で相談しやすい雰囲気。一般社団法人。大阪エリアに強い。
株式会社蒼悠(港コンサルティング)
50/100点
関西エリアに強い大阪の不動産会社。年間の相談実績が200件超。無料の訪問査定有り(机上査定も対応可)。
株式会社チェスター
40/100点
相続税専門の税理士法人グループ会社。東京、横浜、大阪に支店あり