親子共有名義の不動産の注意点とは?親が子に持分を譲渡するときの注意点と手続きを紹介
「親子共有名義の不動産の注意点は?」
「譲渡したいけど注意すべき点はある?」
「どうやって譲渡するの?」
親子で共有名義の不動産を所有しているケースは多く見受けられます。しかし共有名義である以上、注意しなければいけない点も多いです。さらに親子間で持分を譲渡する際は、さまざまな点を理解しておかなければ税金が課せられる可能性もあります。この記事では親子共有名義の不動産を所有している際の注意点、譲渡する際の注意点、3つの譲渡方法について紹介します。
■1.親子共有名義の不動産の注意点
親子共有名義の不動産を所有する際は以下の3点に注意しなければいけません。
1-1 親が亡くなると、子のローン負担が増える
親子共有名義の不動産を金融機関から借入で購入した後、親が亡くなってしまうと、親の債務を子どもが相続することになるため、ローン負担額が増えてしまいます。親子で共同借入するローンには「親子ペアローン」と「親子リレーローン」があります。親子ペアローンは同時に借入返済が始まるのに対し、親子リレーローンは親が先に返済し、親の返済期間が終わると子が残債務を支払うローンです。どちらのローンであっても、親が返済期間中に亡くなってしまうと、子どもは債務を継承しなければいけないため、子のローン負担額が増える点に注意しなければいけません。
1-2 相続トラブルになる可能性がある
親が亡くなってしまった後、子どもなどの親族間で相続トラブルに発展する可能性もあります。例えば共有名義で長男が不動産を所有しており、親の持分をそのまま長男が相続するとなると、他の子どもからしたら不公平に感じる場合もあります。
もちろん相続人同士で財産争いしないために、長男以外の子どもたちが他の不動産や預貯金などを相続し、公平にするケースが一般的です。しかし親の財産が少なく不動産など分割にしにくい財産だけの場合、相続人同士でトラブルに発展するケースも多いです。
1-3 自由に不動産を活用することができない
共有名義不動産の売却や建て替え等の変更行為には、共有者全員の同意が必要です。
親子間であってもお互いの意思が異なれば、売却や建て替えといった変更行為を行うことはできません。
親子共有名義で起こりうるパターンとして、親が認知症になってしまうケースです。認知症と診断された場合、本人が法律行為を行うことはできなくなります。
つまり、認知症の状態では共有者の同意として法的に認められず、売却や建て替えができない状態になってしまいます。
認知症の共有者の同意として成立させるには、家庭裁判所に成年後見開始の申し立てを行い、成年後見人を選任する必要があります。
■2. 親から子に共有持分を譲渡するときの注意点
親は生前中に子どもに財産を渡そうと考える人も多いですが、共有持分を譲渡する際はさまざまな税金が課せられる可能性も高いため注意しなければいけません。ここでは5つの注意点を紹介します。
2-1 適正な価格で譲渡しないと贈与税の課税対象となる
親子間という理由で相場価格より安く、持分を子どもへ譲渡しようと考える人もいらっしゃいます。しかし適正な価格で譲渡しないとみなし贈与という扱いとなり、贈与税の課税対象になる可能税もあるため、注意しなければいけません。
例えば相場価格が1,000万円であるものの、100万円で譲渡した場合、売却ではなく贈与を行ったと認識され、差額の900万円に対して贈与税が課せられます。親族間の譲渡であっても税務署が確認してますので、適正な価格で譲渡するようにしましょう。
2-2 分割贈与はみなし贈与になることもある
贈与税は年間110万円までの財産贈与であれば非課税となるため、共有持分を毎年110万円分までに分けて贈与しようとします。
しかし計画的な贈与はみなし贈与の扱いになる可能性もあるため注意しなければいけません。
例えば1,100万円の財産を110万円ずつ贈与するとなると、10年かかります。しかし明らかに計画性のある贈与であると納税を逃れようとしていると判断され、贈与税を納税することにもなりかねません。
2-3 親から子に贈与しても7年間は相続税の課税対象となる
親から子どもに持分を贈与しても、相続が発生する前の3年間の贈与は相続財産とみなされ、相続税の課税対象となります。
本来、相続税は被相続人(亡くなった方)が所有していた財産に対して課せられる税金です。生前中に子どもへ贈与しておけば、被相続人の財産は減ることになりますが、2023年12月31日以前に受けた贈与に関しては3年間は相続税の課税対象となります。(2024年度以降は7年間となります)
2-4 購入者は不動産取得税が課せられる
子どもが親の持分を購入した場合でも、不動産取得税が課せられます。
不動産取得税は固定資産税評価額に3%(2024年3月31日まで)を掛けた金額です。固定資産税評価額は固定資産税などの税金を算出する際の指標であり、固定資産税納税通知書や役所で発行できる固定資産評価証明書で確認できます。不動産取得税は持分を取得してから半年や1年前後と忘れたころに納税通知書が購入者に届くため、支払い代金を用意しておきましょう。
2-5 認知症になると持分譲渡が困難になる
先述の通り、親が認知症となると、基本的に不動産の売買や贈与など、法律行為は行えなくなり、持分を子どもへ渡せなくなります。認知症は今や65歳の5人に1人がなる病気です。認知症となった場合、成年後見人制度を利用して、親に代わって後見人が財産管理や介護施設入所への契約、遺産分割の協議などを行うことができます。しかし手続きが複雑なうえ、時間も長くかかるというデメリットがあります。そのため出来れば認知症になる前に子どもへ譲渡していたほうが良いでしょう。
■3. 共有持分を譲渡する方法
親から子どもへ共有持分を譲渡する方法は以下の3つあります。それぞれ説明していきましょう。
3-1売買契約を締結する
親子で売買契約を締結し、売買代金を支払う方法です。
不動産売買では、トラブルのリスクヘッジも兼ねて必ず売買契約書を作成します。親子間でも贈与とみなされないようにするためにも、契約書を作成していたほうが良いでしょう。契約書は、不動産会社に依頼すれば作成してくれます。ただし仲介手数料が発生する可能性もあるため、事前に不動産会社へ確認しておきましょう。
3-2贈与契約を締結する
贈与する場合は贈与契約書を作成し、締結します。「いつ、誰が誰に贈与したか」を証明するためにも必要です。万が一税務署から確認された時、贈与契約書があれば贈与の内容を証明することが出来ます。贈与契約書は税理士に依頼すると作成してもらうことが可能です。
3-3遺言書に明記しておく
遺言書に持分を相続させる相手を明記しておく方法です。
原則、相続が発生し遺言書がある場合、遺産分割は被相続人の意思を尊重できる遺言書に基づいて行います。とはいえ相続人全員が遺言書の内容と異なる内容で遺産分割することに同意した場合、遺言書は効力を発揮しないため、被相続人の意志通りに相続できる訳ではありません。
しかし遺言書を無視するというケースは稀であるため、持分を相続させる相手を明記しておくとよいでしょう。ただし他の相続人が納得できないような遺言内容の場合、相続人同士でトラブルにもなりかねないため注意してください。
■まとめ
親子共有名義の不動産は相続や活用用途の違いでトラブルになる可能性も高いです。そのため親から子どもへ持分を譲渡する方も多いですが、さまざまな税金の課税対象になるため注意しなければいけません。事前に税金の計算を税理士や共有持分を専門とする不動産会社に依頼し、適切な方法を見つけてから譲渡しましょう。